「昨日あれだけやったのに…また忘れてる」
そんな風に思ったことはありませんか?
- うちの子、どうしても暗記が苦手で…
- 覚えたと思ったら、すぐに忘れるんです
- テストで「あ〜、それだった!」と悔しがってばかり
それに対して私が必ず伝えるのは、
「あなたのお子さんは決して記憶力がないわけではない」という事実です。
むしろ多くの子どもたちは、
覚えたことを”思い出す力”が育っていないだけ**なんです。
記憶は“覚える”だけでは定着しません。
“思い出す”ことで、初めて知識が使えるようになります。
「記憶できない」のではなく、「思い出せない」だけ
これは私自身の話ですが──
私は小学生の頃、日能研に通っていました。
そしていつもこんな風に思っていました。
「こんなに覚えられるわけねーじゃん」
歴史も理科も、言葉は初めて聞くものばかり。
ページはどんどん進むし、頭の中はぐちゃぐちゃ。
でも、そんなとき塾の先生に言われた言葉が、今でも記憶に残っています。
(顔も名前も一切覚えてませんが)
「覚えるんじゃない。“思い出す”練習をしろ」
この一言で、私の勉強法はガラッと変わりました。
そして今、私は中学受験の指導の中で、まさにこの考え方を大切にしています。
覚えるコツは何度も思い出すことにある

お子さんを見ていて、こんなことありませんか?
- アニメのキャラクターの名前はすぐ覚える
- 好きなYouTuberのセリフを丸ごと言える
- テストで答えを見た瞬間に「あー!それ知ってた!」と反応する
もし本当に「覚えていない」のであれば、答えを見ても何も感じないはずです。
「そうだった!」と反応するのは、頭の中に情報が入っていた証拠。
では、なぜ好きなことは覚えられて、勉強は忘れてしまうのでしょう?
その理由は、“思い出す回数”の差です。
好きなことは、日常の中で何度も思い出す機会があります。
友達との会話、動画、遊びの中で、自然とアウトプットされるんです。
一方、勉強は一度覚えたら、テストまで放置されがち。
つまり──
記憶をつなぐ「線」がないまま、バラバラの「点」だけを持っている状態なんです。
「思い出す力」を鍛える3つのステップ

ここからは、私が実際の指導でも取り入れている、家庭でできる記憶トレーニングを紹介します。
いずれも、特別な道具や時間は不要。むしろ、シンプルだけど本質的な方法です。
🧠 Step1:目を閉じて「脳内再生」する
何かを覚えたいとき、テキストを閉じて、目を閉じて、頭の中で再現してみる。
たったこれだけのことで、記憶の質が劇的に変わります。
ポイントは「見ながら」やらないこと。
見ているだけの勉強は、あくまでインプット。
頭から引き出す練習(アウトプット)を通して、初めて記憶が定着するのです。
目を閉じることで自然と
思い出せなかったら、一度チラッと見て、また目を閉じてやり直す。
この「試行錯誤」が、記憶を深くしていきます。
🧩 Step2:思い出すための「きっかけ」を仕込む
情報がバラバラなままだと、テスト中に出てこないのは当然です。
そこで、覚える前に「地図」や「目次」を頭の中に作っておくことが効果的です。
たとえば、歴史の「奈良時代」を覚えるとき。
私はこんなふうに、まず“枠組み”を意識させます。
項目 | 覚える個数 | 覚えること |
---|---|---|
重要人物 | 1人 | 聖武天皇 |
できごとなど | 3つ | 大仏、国分寺、墾田永年私財法 |
書物 | 3つ | 古事記、日本書紀、風土記 |
歌集 | 1つ | 万葉集 |
建築 | 2つ | 正倉院、唐招提寺 |
こうやって先にこの骨組みを作っておくと、
テスト中に「たしか書物は3つあったな」と思い出すきっかけをつくることができます。
仮に忘れてしまってもこのきっかけがあることで
何もないよりも格段に思い出すことができるのです。
⏰ Step3:「寝る前」と「翌朝」に思い出す
勉強したことは、思い出すタイミングによって定着率が大きく変わります。
家庭で実践できる、おすすめの復習タイミングは次の4つ:
- 学習直後(5〜10分後)
- 寝る前
- 翌朝
- 1週間後(週末など)
特に効果的なのが、②と③のセット。
寝る前に復習し、翌朝にもう一度クイズ形式で思い出す。
このタイミングが記憶に残るのは、脳が寝ている間に情報を整理するからです。
実際に、以前ご相談を受けたお母さまから、後日こんな嬉しいご報告をいただいたことがあります。
「先生に教わった通り、寝る前に少しだけ復習して、翌朝に『昨日のクイズだよ!』と聞いてみたら、驚くほどスラスラ答えられたんです。『これならできる!』と、息子も自信がついたみたいで…本当にありがとうございました」
記憶は“詰め込む”ものではなく、“引き出す”ものです。
その感覚を親子で共有できたら、お子さんはもっと積極的に知識を得ようと前向きになります。
「わかった!」の成功体験が、自信を育てる
お子さんが暗記に苦手意識を持っているなら、それは単に「思い出す練習」が足りていないだけかもしれません。
「また忘れてる!」と責める前に、ぜひ“一緒に思い出す練習”を楽しんでみてください。
それがきっと、お子さんにとって「できた!」「思い出せた!」という成功体験につながり、
やがては自信とやる気を生む、大きな一歩になります。
今日からできる3つのこと
- 目を閉じて、頭の中で再現してみる
- 覚える前に、情報の「目次」や「枠組み」を作る
- 寝る前と翌朝のタイミングで、クイズのように復習する