中学受験コンサルタントの齋藤達也です。
「国語だけなかなか成績が上がらない」──中学受験でこの悩みは非常に多いです。これまで20年以上、1000組以上のご家庭の相談に乗り、120名以上のお子さんを直接指導してきた私も、この悩みを数えきれないほど聞いてきました。
実はその原因は、お子さんの努力不足でも才能でもなく、塾の“構造的な限界”にあります。そして、解決のカギはご家庭での「なぜそう考えたのか?」と問いかける会話です。
この記事ででわかること
- 国語が塾で伸びない3つの理由
- 国語ができる子とできない子の決定的な違い
- 家庭で今すぐできる具体的な声かけ法
もし、あなたのお子さんに「なんとなくで選択肢を選んでいる」「記述が空欄になりがち」といった点が一つでも当てはまるなら、この記事はきっとお役に立てるはずです。
中学受験で国語の成績が上がらない本当の原因は、個人の努力では変えられない「塾の構造」にありました
いきなり核心からお話しします。
お子さんが塾で一生懸命に授業を受けているのに国語の成績だけが上がらないのだとしたら、その主な原因は、塾の集団授業の『性質』そのものにあるのです。
「頑張っているのに、なぜ国語だけ…」と感じても、それはお子さんやあなたの努力不足ではありません。むしろ、その不安を感じている時点で、親として最善を尽くしている証拠です。
実は私も以前、塾のリモート授業を見る機会がありました。そこで感じたのは、先生が「大事なところ」は教えてくれるものの、「なぜそこが大切なのか」「その型をどう使うのか」といった、生徒に教えなくてはならない“解答を出すまでの考え方”までは教えきれていないという現実です。
これは先生の責任でも、もちろんお子さんのせいでもありません。
一人ひとりの理解度や考え方が違う生徒を同時に教える、集団授業の限界なのです。
では、なぜ塾・そして集団授業というシステムでは国語が伸びにくいのでしょうか。その背景にある具体的な3つの理由を、ここから詳しく解説していきます。
理由1:国語の「解き方」を教えられる指導者が少ない
よく「名選手、必ずしも名監督ならず」と言われますが、これは国語の指導にもそのまま当てはまります。「国語が解けること」と「解き方を教えられること」は、全く別の専門スキルなのです。
国語が得意な人ほど自然に設問に答えてしまうため、自分がどのように考えて解いているのか?ということを上手に伝えることができません。そのため、多くの指導者の授業は、文章の読み方や設問を解く際の考え方を教えるのではなく、単なる「答えの解説」に終始してしまいがちです。
「この問題の答えはウです。なぜなら本文のここにこう書いてあるからです」という説明では、お子さんが一人で正解にたどり着くための「考え方の武器」は、いつまで経っても手に入らないのです。
理由2:国語には解き方があることを伝えきれていない
国語が苦手な子は、国語を「なんとなく」の感覚で解いており、そこには設問の「型」や解き方の「ルール」があることを知りません。
もちろん塾の授業でも「解き方」は教えます。しかし国語の場合、その場で正解が出ると、お子さんは「なんとなくでも解けたから大丈夫」と満足してしまいがちです。なぜその解き方が重要なのか、という本質的な部分まで一人ひとりに浸透させるのは、集団授業では非常に難しいのが現状です。
結果として、お子さんはいつまでも自己流の解き方から抜け出せず成績が伸びることがないのです。
理由3:集団授業では一人ひとりの「文章の読み方や解き方」を直せない
国語の成績を上げるには、文章の読み方や問題の解き方をを正しい方向へ修正する作業が不可欠です。算数であれば、途中の式を見ればどこで間違えたかが一目瞭然です。
しかし、国語の場合は文章の読み方や設問の解き方が目に見えないため、指導者が隣で「どう考えたの?」と一つひとつ確認する以外に、解けない理由や間違えた理由を発見する方法はありません。集団塾という「1対多数」の形式では、一人ひとりにそこまで丁寧な指導をすることは物理的に不可能なのです。
国語ができる子とできない子の違いは「センス」ではなく、たった一つのこと
では、国語ができる子は何が違うのでしょうか。
その違いは、才能やセンスではありません。正しい「読み方・解き方の型」を知っているか、いないか。ただそれだけの差なのです。
国語ができる子は、この「型」を無意識に身につけているため、塾の解説を聞きながら、「あ、自分はここで考え方を間違えたんだな」と自分で気づいて、やり方を直せるのです。
一方、国語が苦手なお子さんは、そもそも比べるための「正しい型」を持っていません。そのため、解説を聞いても自分の間違いにピンとこず、「ふーん、答えはウなんだ」で終わってしまい、次のテストに全く活かすことができないのです。
このように、お子さんが自分一人では気づけない「考え方のクセ」や「勘違い」を、隣で見つけてあげて、「本当はこう考えればスッキリ解けるんだよ」という正しい答えまでの道筋を教えてあげる上で、中学受験の国語に特化した個別指導は大きな力になります。
中学受験国語の成績を伸ばす、私の指導のコツは「解答の根拠」を探すこと
では、その「正しい型」とは一体何なのか?
私が20年以上の指導経験から確信している、成績を伸ばすための“たった一つの原則”があります。
それは、文章の中から「解答の根拠」を見つけようとしているか。
これに尽きます。
国語の答えは、すべて本文の中に書いてあるのです。
私の指導では、設問がお子さんの正解・不正解に関わらず、必ずこう質問します。
「なるほど。じゃあ、なんでその答えを選んだの?」
選択肢問題は、4択なら25%、5択なら20%の確率で偶然当たってしまいます。だから、たとえ合っていても決して安心はできません。大切なのは、なぜその答えを選んだのか、その理由が正しいのかどうかです。
指導を始めたばかりのお子さんのほとんどは、私の問いにこう答えます。
「なんとなく、そう思ったから」
私は、その答えを絶対に認めません。
「そのなんとなくは、どこから来たの?本文のどの言葉をヒントにしたのか教えて」と、根拠を明確にするまで問い続けます。
もちろん、初めはすごく嫌がられます。考えを言葉にすることに慣れていないからです。
しかし、私が根気強く「なんで?」「どこに書いてある?」と聞き続けると、お子さんは答えの根拠を本文から探すしかなくなります。
そしてある時から、お子さんが私の質問を待たずに、自信を持ってこう言ってくれるようになるのです。
「先生、答えは『ウ』だよ。だって、本文のここにこう書いてあるから」
この言葉がお子さんの口から自然に出るようになったら、国語の成績は着実に伸びていきます。私は、この変化の瞬間を、これまで数えきれないほど見てきました。
中学受験国語のプロ直伝!成績が上がる親の声かけ3ステップ
「プロの指導法はよくわかった。でも、同じことを家庭で実践するのは難しそう…」
ここまで読んで、そう思われたかもしれませんね。
ご安心ください。もちろん、ご家庭で私の指導を完全に再現する必要はありません。
大切なのは、親が先生のように「教える」のではなく、
お子さんが答えの根拠を見つけるのを隣で手伝ってあげたり一緒に考えてあげたりすることです。
ここからは、私の指導のエッセンスをご家庭でも実践できるよう凝縮した、具体的な言葉がけを3つのステップでご紹介します。
ステップ1.問題を解く前にやることを確認する
問題をいきなり解き始めるのではなく、まず親子で「何を探しに行くのか」という目的を共有することが大切です。
- 「この問題って、結局『何』を聞かれてるのかな?」
- 「答えのヒントになりそうな『大事な言葉』は、質問の中にどれだと思う?」
- 「この答え、本文のどのへんに書いてありそう?当たりをつけてみようか」
ステップ2.問題を解いた後には「なんで?」と聞く
答えが合っていたかどうかよりも、「どうしてその答えになったのか」をお子さん自身の言葉で説明してもらうことが、成績アップへの一番の近道です。
- (基本の問い)「なんで『ウ』を選んだの?どこに書いてあった?」
- (選択肢問題で)「ちなみに他の(アとかイとか)は、本文のどこを読んで『これは違うな』って思ったの?」
- (記述問題で)「この答え、すごく良いね!この文は本文のどこを使ったの?」
ステップ3.お子さんが「なんとなく」、「そう思った」と答えたときにやること
この言葉は、理由や根拠がなくその答えを選んでいるか、理由はあるんだけれどはっきりと書いてあるところが分かっていないときに出る言葉です。ここがあなたの腕の見せ所です。
- (正解の根拠を探させる)
「じゃあ、選んだこの選択肢と同じようなことが書いてある場所を本文から探してみようか。」 - (正解の根拠が見つからなかったら不正解の根拠を探させる)
「そしたら『これは絶対に違う』って思った選択肢はある? 本文のどこを読んでそう判断したのか教えてくれる?」 - (それでも見つからない場合)
「ヒントを出すよ。この段落あたりにあるから、もう一回、ここからここまでで探して。」(※この時、あなたは解説を見てもOKです)
これらの声かけのポイントは、お子さんの考えを否定せず、一緒に答えの根拠を探すためのサポート役になってあげることです。こうして寄り添う姿勢が大切ですが、一方で、良かれと思ってかけた言葉が、逆にお子さんのやる気を削いでしまうこともあります。次に、つい言ってしまいがちですが避けたいNGな言葉を見ていきましょう。
要注意!良かれと思っても逆効果。国語の成績が伸び悩む親のNG言葉
良かれと思ってかけた言葉が、逆にお子さんを追い詰めてしまうこともあります。以下の言葉は、意識して避けるようにしてください。
- 「なんでこんなのも分からないの!」(能力の否定)
- 「ちゃんと文章を読んでないからでしょ!」(勝手な決めつけ)
- 「答えはウでしょ。だってここにこう書いてあるじゃない。」(お子さんが考える機会を奪ってしまう)
- 「○○ちゃんは、もうこんな問題スラスラ解けるらしいよ」(他人との比較によるプレッシャー)
これらのNG言葉を避け、先ほどご紹介したようなポジティブな声かけを意識するだけで、お子さんは安心して自分の考えを話せるようになります。それでは最後に、この記事でお伝えした最も大切なポイントを振り返ってみましょう。
【まとめ】国語の成績を伸ばすために、ご家庭でできること
中学受験の国語の成績が上がらない本当の理由は、お子さんの能力やセンスではありませんでした。そして、その解決策は、ご家庭でのほんの少しの関わり方の工夫にあることも、お分かりいただけたかと思います。
最後に、この記事でお伝えした最も大切なポイントを、3つのキーワードで振り返ってみましょう。
- 原因は「塾の構造」
成績が伸び悩むのは、集団授業の限界であり、お子さんのせいではありません。 - カギは「解答の根拠」探し
国語の答えは、すべて本文に書かれています - あなたの役目は「どこに書いてあった?」と聞くこと
親は「教える先生」ではなく、お子さんの考えを引き出すサポート役になりましょう。
「国語の成績が上がる」その瞬間を、あなたとお子さんの現実に。
入試本番までの時間は、限られています。
この記事を読んで、「塾だけで国語を伸ばすことが難しい理由」も、「ご家庭での関わり方の重要性」も、きっと深くご理解いただけたことと思います。
その上で、もし今あなたがこう感じているなら。
- 「やるべきことは分かった。でも、うちの子に合ったやり方が本当にこれでいいのか、確信が持てない」
- 「私が教えてもあまり上手くいかないんじゃない気がする」
そのお気持ち、よく分かります。
私も娘を持つ身ですが、自分の子の勉強をみることの難しさを毎日のように痛感しています。
だからこそ、一度だけ、私の授業をお子さんに「体感」させてください。
私が体験授業でお見せするのは、
塾の授業で行われている正解を知っているからこそできる解答の解説ではありません
- なぜ、本文のこの一文が決定的に重要なのか
- なぜ、この選択肢が正解で、他の選択肢は不正解だと言い切れるのか
その理由を、お子さんにも分かるように、
一つひとつはっきりと「言葉」で説明していく、ただそれだけです。
この体験を通じて、お子さんはきっとこう感じるはずです。
「国語は“なんとなく”で解くものじゃない。ちゃんとルールがあったんだ!」と。
この、たった一つの「実感」こそが、お子さんの国語に対する意識を根底から変える、最初の、そして最も重要な一歩になります。
お子さんに「これなら自分でも解ける!」という“成功体験”を、プレゼントしませんか?
※無理な勧誘は一切ありません。まずはプロの視点を体感するだけでも価値があります。